27.児童精神科ってどんなところ?
~ 本人の持ち味 活かすお手伝い ~
私は大学を卒業してから20年余りがたちます。小児科医として8年勤めたのち、今
の仕事である児童精神科の研修を受け、途中の保健所勤務もはさみ、足掛け12年ほど
になります。
近年「児童精神科」は、広く知られるようになり、受診されるお子さん・ご家族も
増えています。「『児童』の『精神科』ってどんなところ?」と思われた方もおられ
るかもしれません。ですので、少し紹介させてください。
① 対象の年齢は?
病院によって少し異なりますが、「幼児期(2、3歳頃)から中学生または18歳ま
で」という設定が多いです。「思春期外来」という名称の場合には、年齢の幅は「6
歳前後(就学)から」「20歳未満まで」など少し上がるかもしれません。
② どんな主訴(心配事)で?
親御さんや園・学校の先生の心配に基づく来院が多いですが、お子さんご自身が相
談・受診を自ら希望して来られるケースもあります。ご本人・ご家族双方が異なる主
訴をお持ちの場合も少なからずあります。
幼児期には、言葉のおくれ、強い人見知りや怖がり、癇癪(かんしゃく)、睡眠の
問題(寝ない・夜中に泣き叫ぶ)などで、ご家族の心配や乳幼児健診で勧められた方
が主です。幼稚園や保育園に入ると、登園渋り(お母さんから離れられない分離不安
の子も)、集団に入れない(参加しない子も)、落ち着きがない、友達と遊べない、
こだわりなども聞かれます。
就学以降には、登校渋り・不登校、友達や先生との関係不良や孤立・いじめに関す
ること、学業不振、長引く頭痛や腹痛・朝起き不良や立ちくらみなどの身体症状、さ
まざまな不安や恐怖(人や視線が怖い、外出が怖い・家から出られない、分離の難し
さも)、強迫症状(過度の確認や儀式)、気分の浮き沈みや情動の不安定さ(特にイ
ライラ)、暴言や物に当たること・暴力、自分を傷つける行動(リストカットや自分
をたたくこと、薬剤のまとめ飲みなど)や自殺企図、抜毛や激しい爪噛みなどの癖、
性の違和感、チック症状など、多彩です。
家族の不和や養育の問題(虐待も含む)もあります。最近は摂食の問題(極度の食
事制限・過食・嘔吐や下剤等による排出、喉のつかえ感や嘔吐恐怖、ストレス等によ
る食事量減少、ひどい偏食など)や、ゲーム・ネットに関する相談(長時間使用、止
められてもやめられず暴言・暴力に至ること、生活リズムや課金の問題も)も増えて
います。また、複数の症状が重なっていることも少なくありません。
お子さんの持ち味(発達のペースやバランス、気質など)自体が問題なのではな
く、示される症状や行動は全て「不具合がある」ことを発信する傷つきやSOSのサ
インと捉えます。ご本人の持ち味とご家族や園・学校・友人など取り巻く環境との関
係性の不調によるところが少なくないため、その全体像をつかみ、関係する支援機関
と協力しながら、ご本人を主体としてできるだけ不具合が小さくなる(難しいことも
ありますが)・持ち味をより活かせるようお手伝いするというイメージです。必要に
応じて最低限のお薬を使うこともあります。
「子どもは社会の宝物・未来の希望」です。お子さんとご家族に信頼していただ
け、安心を届けられ、共に希望を創り出す応援団であれるよう努めています。