病気の話

「強迫性障害」の治療

 強迫性障害は、以前は治療が非常に難しい疾患の1つでした。しかしながら、現在は「治療可能」な疾患とされています。
 強迫性障害の治療法として現在推奨されているものは、「薬物療法」と「認知行動療法」です。
 今回はこの2つについて説明したいと思います。

薬物療法

 「セロトニン再取り込み阻害薬」という抗うつ薬の一種が、有効性を示すことが立証されています。しかし、これらの薬を飲み始めてすぐに効果が出るというわけではありません。十分量を十分期間服用する必要があり、薬物の効果を判定するのに12週~26週間は必要であるとも言われています。つまり、根気強く飲み続ける必要があるということです。効果については、症状の完全な減少から全く減少がない例まで個人差が大きくありますが、通常症状の50%の減少に満たないといわれています。また1つの薬で効果が乏しい例でも、他の薬に変えてみることで効果が得られる可能性も十分あります。効果だけでなく、副作用もきちんと評価しながら、最も効果の得られる薬を、慎重に根気強く見つけていくことが重要です。

認知行動療法

 「エクスポージャーと儀式妨害(ERP)」という技法が、強迫性障害に対する認知行動療法の中心的な治療技法であり、有効性を示すことが立証されています。エクスポージャーというのは日本語で「曝露(ばくろ)」と言いますが、不安を感じるためにこれまで避けていたことを、不安であってもあえて行い、ならしていくという技法です。
 儀式妨害というのは、強迫観念や不安を打ち消すために行っていた強迫行為(儀式)をやめていくという技法です。つまり、前回の「不潔なものが怖いAさん」であれば、バスのつり革など不潔に感じるものをしっかり触り(エクスポージャー)、その後家に帰っても手洗いをしない(儀式妨害)ということになります。強迫性障害の患者さんにとっては、非常に難しく辛い治療法です。この治療法を提示されて、「ぜひやってみたい!」と飛びつく患者さんは決して多いとは言えないでしょう。しかし、ERPを行った患者さんの60~85%の確率で強迫症状の大幅な改善が認められると報告されています。また、早ければ3週間ほどで治療を終結することが可能でもあり、治療を行う上で生じる不安や苦痛は長期間持続するものではありません。身体疾患や副作用の問題などで薬物療法を行えない方や、薬物療法で十分な効果が得られなかった方でも、症状の改善を期待できる治療法でもあります。

 強迫性障害は、放っておいて自然と治ることは非常にまれです。学校に行けない、仕事に行けないのみならず、単純な日常生活ですら思うように過ごせず、大切な人との関係にまで深刻な問題を及ぼすこともあります。本来の生活や目標を取り戻すために、少しでも早く治療に取りかかることが重要と思われます。

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