病気の話

不登校とアスペルガー障害

 今回は、不登校の原因のひとつ、アスペルガー障害についてお話します。
 アスペルガー障害が見過ごされてしまうと、対人関係でトラブルを重ね、いじめや親から子への虐待、深刻な「心の病」を発症してしまうこともあるのです。

 文部科学省の不登校の定義は「(途中略)年間30日間以上の欠席をした者のうち、病気や経済的な理由によるものを除いたもの」となっています。「30日間」と聞くとさほどでもないと思われるかもしれませんが、公立小中学校での年間登校日数は200日ほどであり、授業実施期間における6~7日のうち1日は休んでいることになります。その基準に当てはまる中学生は平成22年の調査では37人に1人(およそクラスに1人)となっています。
 不登校の原因は実にさまざまで書ききれませんが、不登校で困っていらっしゃるお子さんの中には「アスペルガー障害」の特性を持っていることが時々見受けられます(「アスペルガー障害」と同様に「自閉症スペクトラム障害」や「広汎性発達性障害」という言葉が使われることがあります)。その特性は主として以下の3つです。

  • 対人関係の構築が不得手である(他人とうまく関われない)
  • コミュニケーションが不得手である(会話や意思の伝達がうまく出来ない)
  • 興味、関心の対象が限られている

 これらの特性のうち、困り感につながるのは最初に挙げた「対人関係の構築」の問題が多いようです。人は一般的に本音と建前を使い分けることが多いのですが、アスペルガーの特性を持った方々は非常に正直で誠実である一方、その正直過ぎる言動、行動が相手を不愉快にさせてしまうことがあります。また、自分自身の行動、言動が周囲の人にはどのように映るかイメージするのが苦手なため、周囲との関係が悪化していじめの対象になってしまったり、本人が孤独を感じてしまったりします。次第に「クラスメートがいる教室内で皆と共に過ごすだけ」ですら強い緊張を強いられ、疲れ切った状態となりますます登校し辛くなっていきます。そして、気分が落ち込む、自宅に引きこもりがちになってしまう、昼夜逆転してパソコン、携帯電話、ゲームなどに1日中没頭するようになることがあります。無理やり部屋から出そうとすると激しく抵抗して親と喧嘩し暴力を振るう...などの悪循環に陥ってしまうことがよくあります。
 不登校の治療ですが、外来でも入院でも決まりきった治療はありません。個々のケースによってさまざまです。しかし、入院した場合、まず一定期間は休養を取っていただくことがほとんどです。彼らは活動していないし疲れてもいないだろう、と思われるかもしれません。しかし、前述のとおり常に緊張を強いられる不登校のお子さんは疲れ切っていることが多いのです。また、気分の落ち込み、不安、衝動性に基づく暴力行為などの症状がある場合は薬物治療が助けになることがあります(薬によってアスペルガーの「特性」が変わるわけではありません)。
 その他、精神療法(個別・集団)やカウンセリングなどで考え方のクセついて話しあったり、社会生活技能訓練:Social Skills Training(SST)でルールやマナーを改めて学ぶこともあります。SSTでは具体的な対人場面を想定し、集団内でロールプレイを行ったりしています。
 以上のように、医療機関では不登校のお子さんが社会でうまくやっていけるようになるためにさまざまなアプローチをしています。もちろん家庭や学校などの協力も必要不可欠で、連携を取りながら対処していくことになります。

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